知っておきたい!什器素材の基礎知識「MDF」とは?
さて、始まりました 【知っておきたい!什器素材の基礎知識】 シリーズ。
毎回、家具や什器の製作に欠かせない様々な 素材 についてのの基礎知識を解説するこのコーナー。
第3回は、 MDF(エムディーエフ) です。
家具や什器に使われる木質基材(台板)の代表格として、
合板、パーティクルボード、MDF があります。
家具や什器の製作には、これら木質基材(台板)の表面にシートや薄い板などを貼って見た目を美しく加工した 化粧板(化粧合板)を使用することが多いです。
今回は、木質基材(台板)の中で、なんの略だかよくわからない、MDFの基礎知識 をお送りします。
第2回 知っておきたい!什器素材の基礎知識「パーティクルボード」とは?
MDF(エムディーエフ)とは?
MDFは、Medium Density Fiberboard(ミディアム・デンシディ・ファイバーボード)の略で、日本語では、中質繊維板と訳され、木材の原料チップを蒸煮・解繊したものに合成樹脂を加えて成形した板です。
出展:日本繊維板工業会
上の図のように、木材の原料チップを粉状に繊維化してから成形した板を総称してファイバーボードといい、ファイバーボードは密度、用途及び製法によって以下の3つに分けられます。
•中質繊維板(MDF)
•硬質繊維板(ハードボード)
•軟質繊維板(インシュレーションボード)
MDFよりも高密度のハードボードは、高強度で自動車の内装材として利用されることが多く、MDFより低密度のインシュレーションボードは、軽量で断熱性や吸湿性などに優れており、畳床といわれる畳の中心部に利用されることが多い板です。
また、ファイバーボードが、木材の原料チップを粉状に「繊維化」したものを成形するのに対して、パーティクルボード(上図右)は、木材の原料チップを「小片化」し、成形した板のことです。
パーティクルボードについて詳しくは、知っておきたい!「パーティクルボード」とは?で解説しています。
MDFの規格
MDFは、パーティクルボードと同じく、JIS(日本産業規格)にて、
①種類、②サイズ、③品質基準などが区分されています。
※JISは、2019年7月1日法改正により「日本工業規格」から「日本産業規格」に名称が変更になりました。
① 種類
MDFはJIS規格において次の以下の種類に区分されます。
・普通MDF → 素地MDF、化粧MDF
・構造用MDF
普通MDFのうち、両面が素地の状態の素地MDFを基材として、両面又は片面に合成樹脂系シート、フィルム、合成樹脂含浸紙、コート紙、アフターコート紙などを接着したものや、化粧面を単色で仕上げた無地物、木目及び抽象模様を付けた柄物などを、化粧MDFと、建築材料として両面が素地の状態の構造用MDFに区分されます。
② サイズ
普通MDFの標準サイズはJIS規格にて、規定されています。
厚さ(mm) |
2.5、2.7、3、4、5.5、7、9、12、14、 15、18、19.6、21、24、25、27、30 |
幅(mm) |
900、910、1,000、1,210、1,820 |
長さ(mm) |
1,820、2,000、2,420、2,730、4,000 |
知っておきたい!「合板」とは?で解説したとおり、
910mmとか1820mmなど中途半端なサイズになっているのは、
尺のサイズをミリに直して表示しているからです。
1尺 = 30.303cm = 303mmなので、
3×6尺 (サブロク)= 910×1,820mm(900×1800)
4×8尺 (シハチ) =1,210×2,420mm(1200×2400)
ということになります。
サブロクとかシハチと呼ばれるサイズは、非常に多く流通しています。
③品質基準
MDFは、JIS規格にて表裏面の状態、曲げ強さ、接着剤、ホルムアルデヒド放散量及び難燃性によって区分されています。
ホルムアルデヒド放散等級は高い順から、F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆となり、これはJAS規格(日本農林規格)と共通基準になっています。
このホルムアルデヒド放散等級は、木質基材に使用する接着剤の化学物質が発散する有害なガス(ホルムアルデヒド)がシックハウス症候群の原因物質の1つとして大きな問題となったことを背景に、2003年に建築基準法で規制されるようになりました。
今では家具や什器の製作には、F☆☆☆☆(フォースター)を使用することが常識となっています。
MDFの特徴
MDFは、他の合板やパーティクルボードなどと比べ、表面が硬く平らで滑らかであり、水や湿度に対する寸法の安定性にも優れています。さらに小口面も緻密であることから、機械加工や彫刻、曲面加工、塗装を施したときにも綺麗な仕上がりとなります。
原料は、合板などには不向きな小径の樹木や端材の利用が可能なほか、建築解体材などの廃材のリサイクル利用も可能なので環境に優しい木質基材と言えます。天然板に比べて価格も安価です。
一方、高湿度で劣化しやすいので、湿気の溜まりやすく、結露が発生するような場所での使用には注意が必要となります。
MDFの用途
MDFの用途としては、断熱性や遮音性が求められ、強度が求められない家具などに用いられています。例えば、システムキッチンの扉・側板・背板や、スピーカーのキャビネット、住宅の造作材などです。
■MDFの主な用途 |
家具、スピーカー用キャビネット |
住宅資材(壁・床・屋根の下地材) |
化粧板の台板 |
MDFの主なメーカー
最後に
いかがだったでしょうか?今回の「MDF」の基礎知識。家具や什器の製作にお役立ちいただけたら幸いです。
MDFのような木質ボートは、戦後の木材需要の高まりから急速に技術発展していきました。天然木だけでは賄えない大量生産の需要に加え、安全性や資源リサイクルの観点からも現代に必要不可欠な木質基材となっています。
それではまた次回、知っておきたい!什器素材の基礎知識シリーズでお会いしましょう!